ピアノを燃やす人たち

ピアノを燃やす、と言えばピアノマニアならば、すぐに山下洋輔さんの石川県でのパフォーマンス(過去2回)を思い出すでしょうか。

同じ事を考える人は、世界にたくさんいるようです。英語のウィキペディアにもピアノ・バーニング(「燃えるピアノ」ぐらいの意味)という項目があるぐらいで、そこに何人もの人の名前があるし、画像検索すると出るわ出るわ。

https://en.wikipedia.org/wiki/Piano_burning

あなたの考える事は既に100人が同じ事を既に考えている、といった警句がありますけれど、いやはや、みんな燃やしているんですね。

ヴァイオリンやクラリネットを燃やそうという人がいないのは、燃える時間、燃えていても演奏できる時間がピアノと比べはるかに短いからでしょうね(パフォーマンスとして燃やす人がいないのではという意味です、もしかすると「私的な怨念で燃やす」とかいうケースはいっぱいあるのかも)。

多分世界で初めてピアノを燃やしたのはアニー・ロックウッド、1968年のことだそうです。ロックウッドはニュージーランド生まれのアメリカの作曲家。この人はピアノを燃やしたり海に沈めたりしていて、楽曲の作曲というよりもむしろ実験的要素が強いです。

アニー・ロックウッド(Wikipedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/Annea_Lockwood

以下の動画で実際に燃やしている様子が見られます&インタビューもあります。

https://vimeo.com/204155087

ロックウッドさんは「燃やすと美しいのよ」と言っています。なるほそ。ピアノだから特別美しい燃え方をするわけではないと思うのですが、高価な物を破壊するという背徳的な悦びもあってなんだか心理的に美しく見えるのでしょう。「夜に燃やすとさらにきれい」・・・そらそうでしょう。

そして「燃やすピアノはもう演奏することの出来ない、修復の出来ないピアノだ」と強調していますから、反発は批判も当然あるのでしょう。ものを大事にしなさいというのが、普通は親から教えられることで、それに真っ向から反対する行為ですから。個人的にはあまりこの方のアートには共感できませんが、批判もたくさん受けてきただろうからきっと批判のかわし方も上手なのではと想像(山下洋輔さんのパフォーマンスとはだいぶ違う気がしています。ロックウッドさんの場合はむしろ「燃やす」という行為そのものに重きがある感じ)。

ときに、ピアノより長く燃える可能性のある楽器ってなんでしょう。あっ。・・・パイプオルガンか・・・。パイプオルガンを燃やしたやつはいないのか。・・・恐ろしくて検索できない。パイプオルガンって時に「億」超えする事もあるとんでもなく高価な楽器ですし。