おめでとうございます、内田光子グラミー賞受賞(2度目)

今日は朝から内田光子グラミー賞受賞のニュースが話題になっています。おめでとうございます。今回で2回目の受賞ということですが、一回目は2011年、モーツァルトの協奏曲第23,24番(クリーヴランド管を弾き振り)でしたので、今回が6年振り。

グラミー賞2017公式サイト
https://www.grammy.com/

今回はドロテア・レシュマンと共同で、つまり歌曲の伴奏での受賞になりました。正確には「クラシック部門最優秀ソロ・ボーカル・アルバム賞」での受賞というとなります。また今年この賞はイアン・ボストリッジのシェークスピア歌曲集も並んで受賞しています。

しかしDECCAからリリースされたこの録音のジャケット写真を見ると、正面は向いていないとはいえ、扱いはレシュマンより内田光子の方がやや大きい・・。

これは・・・。まあ内田光子の方が20歳近く年長だし、シューマンの歌曲とかってオーソレミーオとかそういうザ・伴奏!歌曲とは違い、ピアノが受け持つ力、意味もすごくたくさんあるので、問題ないといえば問題ないです。歌手より大きくていいの?と思わなくもないですけれど。

あるいはひょっっとして「光子の方を大きくして」と言った人がいるのかも知れませんが、それでも・・・問題ないかなと思います。歌手サイドも了解してリリースされているわけですから。写真を撮ったカメラマン、あるいはDECCAのプロデューサーなどの意向もあるでしょう。

なんにせよ、おめでたいことには違いありません。おめでとうございます。

内田光子は大変気難しいとしても有名な方で、今年オープンしたハンブルクのエルプフィルハーモニーの新しいピアノを選ぶのを任されたのに、試し弾きしたピアノ12台全部を否定して話題になったりしています(最終的には3台をハッピーに選んだそうですが)。

とある関係者から「光子はとてもpicky(えり好みが激しい、口うるさい)だよ」と聞いたこともあります。ここに最近のインタビュー記事がありますけれど(2017年1月10日付けザ・テレグラフ紙《Mitsuko Uchida interview: ‘It’s not enough to play the piano – it takes a lifetime to understand music’》内田光子インタビュー:「ピアノを弾くだけじゃ十分じゃない。一生かかってやっと音楽は理解出来る」)、それもよくわかりますよ。

バックハウスのよさがまったくわからなかった、とか、フォルテピアノでモーツァルトなんて冗談じゃないわよ、などと、敵を呼び寄せそうな尖った発言をしております。音楽とは直接関係ないですけど「日本食が健康にいいなんて全くのうそ。味の素だらけで、日本に何週間かいるだけで気分が悪くなる」。ずばずば言いますな。

おもしろいなと思ったのは以下の発言です。せっかくなので訳してみます。

“Nowadays young pianists are pushed, pushed, pushed,” she says. “There is such pressure to be a star instantly. Everything has to be instant, because of this social… social… what do you call it?” Social media? “Yes exactly. They think this is something to do with “sharing”, telling the world what they had for breakfast. That is not sharing, that is advertising. Sharing is what happens in a room with a few people at a concert, everyone focused on something they love.”

「今の時代は若いピアニストは猛烈にプッシュされている。一瞬でスターにならないといけない、という強烈なプレッシャーがあるんです。何もかもが「今すぐ」でなければならないのです。えーとソーシャル、ソーシャルなんだっけ?そう、ソーシャルメディア。朝ご飯に何を食べたとかいうようなことを世界に向けてシェアしないと、って思うらしいんだけれど、それはシェアじゃなくて宣伝でしょ。シェアっていうのは、少人数がコンサートにきて、同じ場所で皆が愛する事に集中している状態で生まれるものです」

もう自分は引退してもいいような歳になってきた、とも語っていますが、コンサートについては数を減らしており、年間50ぐらいだそうです。日本国内でもいくつかの大都市の、特定のホールでしか弾きません。東京ですとサントリーホール以外では滅多に弾かないはずです。

しかし気難しいとかなんだかんだ言われつつも、世界のトップクラスのホール、オーケストラと協演を続けているのですから、すごい事ですよ。夜中にホテルで暴れて調度品をぶっこわすようなロッカーもいるわけだしね(・・・そういう問題じゃないか)。内田光子万歳!