ピアノの話を中心にしているねもねも舎ですが、今日は指揮者です。なぜかというと「女性指揮者」についてけっこう大きめのニュースが飛び込んできたからです。
世の中に女性ピアニストはたくさんいます。アルゲリッチしかり、ヴィルサラーゼしかり、現役だけを数えても数え切れないぐらい。ヴァイオリニストだってチェリストだって、管楽器奏者だってそうです。
女性指揮者の台頭
ところが女性指揮者は、音楽家において鬼門、といってもいいほどでした。なにせ第一線で活躍している人がほとんどいません。
ある世界トップオーケストラの管楽器奏者達から数年前聞いたことがあるのですが、彼らも女性指揮者には否定的で、冗談めかして「女性には指揮ができない、なぜなら胸が邪魔でうまく拍を刻めないから」と言っていました。ヴィオラジョークよりもきついジョークです。(彼らの名誉のため特定はしませんが、世界トップ5にずっと入っているようなオーケストラの奏者です。数年前の話なので、もしかすると彼らも今は考えを変えているかも知れません)
が、そういうジョークはもう通用しない時代になりつつある。
いま世界の第一線で活躍している女性指揮者は、マーリン・オールソップ(アメリカ人)、シモーネ・ヤング(オーストラリア人)、この二人が最も有名かと思います。また古楽系ではエマヌエル・アイム(フランス人)がベルリン・フィルを振っていたり、美女ということで注目されているアロンドラ・デ・ラ・パーラ(メキシコ人)はNHK交響楽団を指揮したりしています。
そしてけさ、驚きのニュースが昨晩飛び込んできた。リトアニア人指揮者のMirga Gražinytė-Tylaが、何とイギリスの名門バーミンガム市交響楽団の指揮者に任命されたというものです。彼女は日本には来たことがないと思いますが、オーストリアのわりと大手の事務所Raab & Böhm(ラープ&ベーム)に所属していて、ロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めている。
しかしまあ、読み方が判らないなこりゃあと思って調べていたら、こういうサイトを見付けました。リトアニア語の読み方を教えてくれるサイト。ここに彼女の名前があったのです。なんということでしょう。
で、さっそく読んでもらいましたら、まあだいたい無理なく読んだそのまま「ミルガ・グラジニーテ・ティラ」が近い感じ。
バーミンガム市交響楽団について
バーミンガム市交響楽団といえばまずはサイモン・ラトル。ここはサイモン・ラトルがわずか25歳の時に音楽監督になり、18年間が鍛え上げて国際的に広く知られるようになった。ラトルの名前を一流にしたと同時に、ヨーロッパ屈指の名門と言われるほどになったオーケストラ。
ラトルがベルリン・フィルに行ったあとは、サカリ・オラモ(当時30歳)、アンドリス・ネルソンス(当時28歳)と来て、次がグラツィニーテ・ティラとなる。まだ29歳。もちろんバーミンガム市交響楽団における女性の音楽監督は初めてですよ。
バーミンガム市交響楽団の長文のプレスリリースはこちら(英語)。昨年つまり2015年にグラツィニーテ・ティラはこのオーケストラにデビューしましたが、そのときの評判がとてもよかったので今年1月に彼女のために新しくコンサートが組まれ、その公演の後、音楽監督の任命が決まったとあります。(上の画像は、そのリリースページです)
ネルソンスやドゥダメルからの祝福のコメントもありますので、英語がいける口の方はお読み下さい。伝統を重んじるばかり改革が進まない古いオーケストラと違う、フットワークの良さが素晴らしい。
彼女のさらなる活躍を期待すると共に、女性指揮者のさらなる台頭も期待したいところであります。やがては女性指揮者、という言葉も廃れるといいですね。