ローラン・カバッソのJTアートホール公演、白熱レポート(2/2)

続きです。前半はこちら。上の画像がイメージで「当日の写真がない」のは舎員Z君が取り損なったからです。Z君とともに、あらためてお詫びいたします。許してちょんまげ。

・・・自分が演奏した事がある人ならこの雰囲気が感覚でわかると思うのですが、舞台上でひとりぼっちというのはストレスの宝庫です。仮にうまく行っていない時があっても、誰も助けてくれない。自分で傷だらけになりながらも進んでいかないといけない。本当にしんどい。

しかも、今日はNHKのラジオ収録があります。後日全国で放送されるのです。そう思うとますますストレスがかかります。CD録音のように撮り直しも出来ませんから、普段よりもさらに「みっともない演奏は出来ない感」「絶対に失敗は許されない感」が高まります。

さあ果たしてどうなるか、と、舞台袖で(大丈夫だよという雰囲気を可能な限り噴出させながら)、こちらもいささかならず固くなって舞台上に送り出したのです。照明が変わるのを待ち、照明OKの合図をいただいてから、防音の、重い扉をぐーっと開けて、送り出した。

・・・普段ならすぐに演奏を始めるカバッソさんですが、なかなか始めない・・・。くうー、緊張してるなー・・・。まずいなまずいな。逃げようかな(逃げられれません)。

そしてようやく音を弾き始めた瞬間、心配は一気に30%ぐらい軽減しました。ちゃんと底まで鍵盤が落ちきった、いい音が出てきたからです(「あがっちゃっている」状態ですと、音がちゃんと鳴りません。フワフワした中身のない音が出ます。こういう状態に陥ると舞台袖の人間の心拍数が爆増します)。

危険な早いパッセージも、やや走り気味だったようにも思いますが、コントロールを失った状態ではなかったので、さらに数10%、安心しました。

ドビュッシーの映像第一集を弾き終わり、袖に帰ってきた時もまだ、相当緊張していましたが、トレ・ビアン!と声をかけました。

緊張も少しほぐれてくれたのか、目に力が出てきたようでした。

もうこうなれば大丈夫でしょう。その後はこちらも安心して聴いていられました。後半のディアベリ変奏曲では50分以上にわたり集中力が切れることなく、ダイナミックかつ繊細さにあふれる演奏を披露。

宣伝文句としても何度も使わせていただきましたが、フランスの音楽雑誌CLASSICAが、カバッソさんのディアベリ変奏曲の録音を、ポリーニ、リヒテル、アラウ、アンダなどの名人を押しのけ第1位に選出したのですが、その理由がよくわかりました。33の変奏をリッチな音で見事に描き分けた。客席の皆様もあっと言う間の50分だったと思います。

終演後の舞台袖も熱く燃えておりました。専門家もたくさん聴きに来ておられて、その中には辛口の方も数名おられましたが、終演後の舞台袖では「超よかった」「素晴らしかった」と絶賛の嵐。「ディアベリ変奏曲っていい曲じゃないなと思ってたけど、すごくいい曲だということがわかった」と語っていた人もいて、これは相当な褒め言葉だなと。

舞台裏、受付、遅れ客対応、また舞台上の譜めくりなどで、舎員一同、出来る限りのサポートはしたかなと思っておりますが、なによりカバッソさんに素晴らしい演奏をしていただき、深く感謝しております。

NHK-FMの放送は2月23日(火)19:30-が予定されています。ベスト・オブ・クラシックです。全国1億2000万強のディアベリ変奏曲ファンの皆様、この演奏は聞き逃せませんよ。楽しみにお待ち下さい。

ありがとうございました。ねもねも舎は次の主催公演について考え始めています。ご期待ください。