コチシュ 1952- 2016
ラーンキ 1951-
シフ 1953-
コチシュが死にました。世界中の新聞、音楽関係誌などが追悼文を寄せています。
コチシュは、ラーンキ、シフと共に「ハンガリーの三羽烏」と呼ばれた。
しかしこの三人は、かなり違うキャリアを歩んでいました。ピアニストとして世界的に最も広く高く評価を得ているのはシフでしょう。しかし3人とも素晴らしいピアニストです。でした。
コチシュの音楽は、厳しい。ざらっとしていて、妥協を許さない肌触りがありました。ショパンの演奏だって、女性的な甘さはなくて「そこまでラディカルに行くか」というぐらい乱暴で、強い才能の照射がありました。
私が初めてコチシュの録音を聴いたのはラフマニノフの協奏曲第1番の録音で、中学生のときでした。その時に思った事を今でも憶えています。「音がアシュケナージに少し似ているな」と、思ったのです。もちろん音楽は、アシュケナージにはない暴力性、怒りがありました。リズムもずっともっと尖っていた。
同じハンガリー出身で、ものすごく暴力的なピアノ曲を書いたバルトークの音楽はコチシュによくマッチしていた。どこまで言ってもオアシスはなく、荒涼としていて、孤独。この人のピアノ演奏の根源には「怒り」の感情があったのではないかと思っています。
近年は指揮での来日、もしくは弾き振りの来日でしたが、独奏も聴いてみたかったです。怒りの塊のような演奏に打ちのめされたかったです。
2,3年前、一度だけお姿をお見かけしたことはありますが、お話したことはありません。その時はおだやかな、にこやかな笑顔を湛えておられました。
アレグロ・バルバロ(1987年)
とげとげしくよそよそしい「喜びの島」
おいおい、喜びはどこにあるのか。これはまるで断罪の様子だ。強靭すぎる。痺れるほど男前だですよこれは。