カルロス・クライバーだってミスをする?

昨日、クライバーも振り間違えたという内容のブログを投稿しましたが、いや歌手が間違っている、というお言葉を頂戴しました。

カルロス・クライバーだってミスをする

そしてあらためまして動画を見、コメント欄も読んだ結果、おそらくご指摘の通りだったのだろうという結論に達しましたので、ここにお詫びを申し上げると同時に、動画のコメント欄にかかれていたコメントなどもご紹介いたします。

一番はっきりと書かれていたのは以下のスレッドです。

This is Baron Ochs’ aria “Da lieg ich” at the end of Act II, and Kleiber wanted to kill himself after -0:45 in the video because Ochs’ servants (bass choristers) were dragging like crazy when they came in at measure 233:

これは第二幕の終わりあたり、オックス男爵の「Da lieg ich」というアリアで、クライバーが自殺するようなポーズをとったのはオックスの召使い(バス合唱)が233小節の入りでものすごく遅れているからである。

とあり、楽譜も掲載してくれていますので楽譜を読みながら注意深く聞き直していきますとやはり歌に問題があることがはっきりしてきます。

そしてこのスレッドの途中に以下のコメントが出されています。

Not completely true. In fact, Moll really was too early, forgot the true words (maybe he had a sudden blackout that was saved by the maestro suggeritore), but the orchestra followed somehow (please note the disharmonic chords). Maybe the maestro suggeritore gave different cues and tempi than Kleiber did. Anyway, stage had or heard a different tempo than the orchestra, so the choir was confused. Everything else was a consequence of this, in the end, some winds had a different idea of how to save it than other parts of the orchestra…;-), they even played before Kleiber’s cue. I know which players played in this performance – very experienced players. Maybe, they had expected Kleiber to focus on the stage and so they tried to provide a fundamental independent support for the stage, because the music has to go on anyway…

少し違う。(クルト・)モルが歌詞を忘れて、早く出すぎたのだ。(多分、とつぜん言葉を忘れて、プロンプターによって救われている)、しかしオーケストラはなぜかそれについて行った(ぐしゃっとなった和音に注目)。プロンプターはたぶんクライバーとは違ったキューとテンポを指示した。ともかくステージ上では違ったテンポになっていたか、少なくとも違うテンポ指示を聞いていたため、合唱団が混乱した。そのほかのことはすべてその結果生じたことで、例えば何人かの管楽器奏者は他のオケメンバーと違う方法でこの状況を救おうとしている。そのためクライバーの指示よりも早く演奏することさえしているのである。この公演の時に誰が演奏していたか知っています。経験を積んだ人たちでした。おそらく、彼らはクライバーにステージ上に集中してほしかったので、直感的に自分たちができるサポートをして舞台を救おうとしたのだと思う。なにしろ音楽は止まることなく続いていかないと行けないのだから・・・。

現実は完璧にこれと同じではなかったかもしれませんが、おそらく正解は遠いところにはなかったのだろうと思います。(プロンプターという言葉をご存じない方はこのページをご覧ください。詳しく書かれています。)

いやはや、昨日は皆様を混乱させてしまいまして申し訳ありませんでした。動画の紹介コメントに「クライバーがミスした」と書かれていたのでそれを信じ込んでしまいました。いけませんね。反省いたします。

クライバーについては、ある人から聞いた逸話ですが「絶対に間違えなかった、そして遅刻することがなかった」そうです。なんでもある指揮者との雑談の時に「自分はこれまで一度も遅刻しなかった。たぶん神様に召される時も遅れることなく正確だろう」と語ったとか。佐々木忠治さんのご著書にも確か、ミーティングの30分前には必ずクライバーは待ち合わせ場所にいた、などと書かれていました。

そう、クライバーは振り間違えた照れ隠しでああいう動作をしたのではなく、怒りと失望を表現するためのジェスチャーだったのだということでしょう。モルも合唱団もプロンプターも、冷や汗をかいたことでしょう・・・。ねもねも舎も冷や汗をコップ100000杯ぐらいかきました。今後も気をつけてまいります。