メルヴィン・タンが語るピアノの練習法

ピアノの練習が好きという方はいますか。大抵の人は嫌いでしょうね。ほとんどの人にとってピアノの練習は気が遠くなるような作業なわけですから。

1つの曲を完全に記憶して演奏するようになれるにはかなりの時間が必要です。一回見ればどんな曲でもだいたいピアノで弾けて、1時間ぐらいあればどんな複雑なオーケストラ譜でもピアノで、しかも暗譜で弾ける、という特異な能力を持った人は世界でも数えるほどしかいないでしょう(例えばアレクサンドル・ラヴィノヴィチはこの能力を持っていると言われています)。

だいたいの人は、苦労に苦労を重ねて一つの曲を自分のものにしている。

もっと楽に曲をマスターできないのか?もっといい練習方法はないのか?

シンガポール出身のメルヴィン・タンはご存知ですか。主にフォルテピアノ奏者として広く知られていますが、普通のモダンピアノももちろん演奏します。

Melvyn Tan
http://www.melvyntan.com/

そのメルヴィン・タンがクラシックFMというサイトでのインタビューに答えていたのですが、「多くの生徒たちは練習の仕方を知らない」のだそうです。

ではどういう練習をすればいいのか。メルヴィン・タンの言葉を読んでみましょう。

A lot of students don’t really know how to practise. The way to practise, I think, is to really listen to yourself, but in a very analytical way. So you almost don’t think of the musical emotions in the piece, but you’re thinking of being able to project each note, thinking about why the composer wrote certain sequences of notes. And then you apply it to a much bigger canvas, you apply the colour and then emotions – and that is a long process.

多くの生徒たちは練習の仕方を知らない。練習とは、私が考えるに、自分の音をよく聴くことです。しかも分析しながらです。ですから作品の感情面についてはほとんど考えなくて、全ての音を正しく出すこと、なぜ作曲家はこういう音のならびで作曲したのか、ということを考えるのです。その後、それをもっと大きなカンバスで考えていく、音色について、それから感情について考えて行くのです。これはとても長いプロセスですね。

‘A lot of students don’t know how to practise’ says pianist Melvyn Tan
http://www.classicfm.com/music-news/interviews/melvyn-tan/
(Classic FMのサイトより)

うん、なんだかこれだけだと消化不良ですね。もっと詳しく聞いてみたいですね。

ともかく、自分の頭で、どうしてこうなっているのか、弾けない箇所があればどうして弾けないのかか、どうすればひけるようになるのか、と言う事を一生懸命考えながら練習することが大切なんだろうなと、なんとなく思います。

ただ繰り返してひいているうちに弾けるようになる(繰り返しているうちに指が慣れたり体が覚えたりしますから)とか、先生が言った通りの練習をすれば弾けるようになる(例えば「付点をつけて練習しなさい」と言われたら盲目的にその通りにする、とか)、というのは最終的には自分のためにならない、ということでしょう。

自分の頭で考えろ!ということですね。あ、当たり前か。でも、その当たり前がほとんどの生徒は出来ていない、ということをメルヴィン・タンはいっているわけです。

ピアノの練習というのは、本当に気が遠くなるようなことの連続です。ホロヴィッツみたいに、どんな曲でも一瞬で弾けるようになれたら楽しいんでしょうねほんとうに。「ワオ!これは難しいね!」と言いながら何だって完璧に弾いてしまう、と。ホロヴィッツは子供の頃から弾けたんでしょうかね。弾けたんだろうな。羨ましい。