「羊と鋼の森」読みました。いい調律師を目指す、若い男性のお話です。ねもねも舎としては見逃せない作品ですね。
調律師の方がバックにいる、というか、少なくとも何度も何時間もインタビューをして、それをもとに書いたんだろうなということはすぐにわかります。いやそれは全然悪いことでもなんでもないです。最後に調律師の方への謝辞もありますし。
読んでいて、多くの登場人物の感覚がすばらしく繊細ところは、あまり現実とは合致しないかな?とは思いました。でも調律師の方々のインタビューをもとに書かれているのでしょうから、調律師の実体験から、現実的に繊細な耳を持った人たちが多いのかも、と考えたりもしました。
なによりきれいな文章で、楽しく読みました。
調律師という職業に就く人の数は減っているそうです。ピアノも売れなくなってきています。今や一般家庭はピアノよりも電子ピアノだと思います。なぜならピアノはうるさいから。デジタルピアノなら音量調整が出来ます。鍵盤を押さえる時のカタカタという打撃音はそれでもわりと伝わるのですが、ピアノが出す音に比べれば遥かに小さい。
東京の電車に乗っていればよくわかると思うのですが、お話をしている人の数が異様に少なく、シーンと静まり返っています。イタリア人とかギリシャ人とか、もともとおしゃべりな人たちが東京の満員電車に乗ると気味悪がるぐらい。慣れている我々は、こういうとき、ふーん、そうなのかと思います。イタリア人とかは満員電車でも普通に携帯電話はマナーモードにしていないし、電話がかかってきたら大声で会話するし、別にそれはみんなオッケーだっと思っているそうです。
いずれにしても、日本人がこういう国民性なのは変えようがない。そしてマンションや、隣近所がギチギチに建つ都会の一戸建てにはピアノが置きにくいという事情もあります。家族だって、ピアノの練習の音がガンガン聞こえてきたらわりとストレスに感じるでしょう。
なのでデジタルピアノ。デジタルピアノの性能が上がってきていることもあって、アップライトピアノを置くぐらいならデジタルピアノを選択する人の数が圧倒的に増えていると思います。
さらなるデジタルピアノの性能向上を求む!っていうのももちろんそうなのでうすが、コンサートグランドピアノがデジタルになる日はまだしばらくは来ないでしょうから、優秀な調律師は必須、育成も必須です。
この本を通じて、調律師という世界に憧れる若い男女が増えることを多いに期待したいです。特に女性調律師、女性のコンサートグランドピアノ調律師はほぼ絶無というのが現状です(著名レストランのシェフに女性が少ないのと同じような感覚だと思っていただければ現状認識としてはほぼ間違いがないです)ので、とくに女性の方に頑張って欲しいです。
それではおやすみなさい。