ホロヴィッツより速いな・・・。

ピアノをやっている人たちにとって聖典は、なあに。それはホロヴィッツ。ホロヴィッツと口の中で三度唱えれば、あなたもホロヴィッツ教に入信です。

20世紀最大のピアニストの一人、ヴィルトゥオーゾという言葉を死ぬまで体現し続けた稀代の天才。ホロヴィッツ、いいよね。ぐっと伸ばした指で弾く演奏方法は、素人が真似すると痛い目にあいます。でもなんだか格好いいので真似したくなるんですよ。ピアニストになりたいと一度は思ったことがある人で、ホロヴィッツの真似をしたことがない、という人はいないでしょう。

現代のホロヴィッツ、という言葉は使い古された言い回しかもしれませんが、ホロヴィッツのような演奏家が出てほしい、という思いがあるからこそ、使われているようにも思います。

そこでユジャ・ワンです。中国人だからなんとかかんとか、というご意見もあるでしょうが、ユジャ・ワンの持つ技術力の高さは絶対に無視できない。

こないだも、何気なくユジャ・ワンの最新のカーネギーホールのライブ映像を流し見していました。ホロヴィッツのカルメン幻想曲のある箇所で、ホロヴィッツよりもさらに高速で弾いていたので、夜中だったにもかかわらず「ホロヴィッツより速いな」、とつぶやいてしまいました。そういう力があります。ちょっと速すぎた分ごまかし気味でしたがこまけえこたあ、いいんだよ。

肝心の動画はこれ

ホロヴィッツより速いのはこの動画の10:25秒ぐらいからの箇所。全体的に弾き慣れている感じもあって、ドロっと怪しく光る危うさがないんですけれど、でもそんなこたあ、いいんだよ。

ユジャ・ワンについては、スカートのスリットに目を取られてその本質を見誤らないようにしたいものです。音に重さはないし、深い精神的満足とも違うが、なによりも、弾ける。世界ほぼすべての現役ピアニストよりも、弾ける。そしてその技を見せることになんのためらいもない。清々しいほどに。

うらやましい!