悟りの日
普通に聴いてすぐわかる通り、この変奏はエンディング、エピローグです。映画で言うとここは最後のスタッフロールに位置する。
悟りの境地というか、無我の境地というか、夢見心地とでもいいますか。いろいろあったけど、最後はしっかり勝ちをもぎとってよかったですよ本当に。長い戦いも終わりました。もう完全に俺たちは気の抜けたビールだ、抜け殻だ。
ここまで32にもおよぶ、ありとあらゆるエゴやトラブルを乗り越え、最後になってルートヴィヒは以下のことに気がついたのではないでしょうか。「天上天下唯我独尊」―人はその存在そのものが尊いのである、とルートヴィヒは椅子に座り、若者達に語っているのである。
かくしてルートヴィヒは、トカイワインの飲み過ぎ、引越ししすぎ、片思いしまくって女性に迷惑をかけすぎ、部屋きたなすぎ、甥っ子をがんじがらめにしすぎ等々の刑で閻魔様に舌をひっこ抜かれてもおかしくないところ、上記一言により天の国へと導かれたのであろう。・・・安らかにお休み下さい。
「運命」などではこれでもかこれでもかという風にガンガンガンガーン!と主和音を叩き付けて終わっていたのですが、この曲はそっ、と終わります。ベートーヴェンの優しさ、頬を伝わる一筋の涙。
-完-
文句を言わずに何度でも演奏してくれるブレンデルさんに感謝!
クリックすると第33変奏。これでおしまい。