チョ・ソンジン、ブティックへ行く。

ブティック・エージェンシーという言葉が近年よく用いられるようになっています。これはどういう意味か。デパートのように、様々なジャンルのアーティストを大量に抱える巨大な音楽事務所ではなく、ブティックのように、小さくてもこだわりのラインナップを持つ音楽事務所。

そういう事務所が、このところブームなんですよね(ブームと言っても、話題になってから大分たちますが)。

大手だと、自分がたんなるコマのように思える、大切にされている感じがしない、あまりにもドライでビジネスライク、お金の動きが不透明だ・・・。などと感じる音楽家達が、ブティックに移籍していっているようです。小さな事務所なら、大手よりももっとずっと人の顔が見えて、アーティスト一人一人に対するケアも十分に出来るはず・・。

こういう事務所を開いて成功しているのはだいたい、もともと大手音楽事務所にいた有能な人たちです。大手だと自分のやりたいことも出来ないし、給料も安いし・・・ならいっそ独立するか!という事で開いちゃうわけです。ブティックを。

でも、誰でもまねしていいわけではありません。失敗のリスクもあるし、なんせ仕事は人間関係だからね。重要なホール、オーケストラなどにすでに人脈を持っている人たちでなければ、なかなかコンサートの営業は決められないです。

こんちわー、薬買って下さーい、といきなり自宅に薬の訪問販売が来ても、警戒してほとんどの人は買わないでしょう。どこの誰だかわからない人が「音楽事務所はじめましたー」と言っても、アーティストからもオーケストラからも信頼をしてもらえないでしょう。音楽関係者との太い人間関係が出来ていないと、ブティック・エージェンシーは作れません。

というわけで、おととしのショパン国際コンクール覇者チョ・ソンジンがアメリカの事務所を大手のOpus 3 Artistsからブティック・エージェンシーであるプリモ・アーティスツに移籍したのは面白いニュースだと思いました。(一昨日づけでリリースがあった模様)

http://www.primoartists.com/uncategorized/pianist-seong-jin-cho-signs-primo-artists/
https://slippedisc.com/2017/08/dawn-raid-boutique-agency-snatches-chopin-winner/

このブティック・エージェンシーは、シャーロット・リーという、(おそらく)中国系の女性がやっている会社。現在抱えるアーティストは、イツァーク・パールマン、ジョシュア・ベル、ニコラ・ベネデッティ、ベアトリーチェ・ラナ、クリスチャン・マチェラル、そしてチョ・ソンジン。

ユダヤ系がとりしきっていると言われるクラシック音楽のビジネスの世界も、今後ますます中国系が大きな勢力を持つことになるかもしれませんね。今後の動静に注目したい。

ってかチョ・ソンジンの公式サイト見たらコンサートむちゃくちゃに入ってますな。すごい体力だ・・・。