アシュケナージ先生に聞いてみよう、その2 緊張しすぎないためにはどうすればいいか。

本番は別に緊張しない、という奇特な人もたまにいるようですが、みなさんはそんな人に会ったことがありますか。私はありません。本当にそんな人はごくごく、稀れじゃないかなと思います。私も昔、演奏する前は死ぬほど緊張しました。今はもう舞台上で弾くことがないから緊張は緩みっぱなしです。これはこれでまずいかもしれませんね。

少し話が違うかもしれませんが、弾いたことのない曲を弾くことになっている、という夢を見たことがある人、音楽関係者なら多いと思います。

しかし、舞台上であがらない、というか、緊張とうまく折り合いをつけるためあなたには何が出来るでしょうか。さあ、アシュケナージに聞いてみましょう。

http://www.classicfm.com/artists/vladimir-ashkenazy/practise-tips-advice/

「あああ、それは難しい質問だね、なぜなら人はひとりひとり違っているからね・・・。」前の質問と同じような言葉がまず突いて出ますね。そう、緊張についても一概にはいえませんよね。

できるだけ多くの人にとって正しい答えを言おうとするなら・・・・と区切ってからアシュケナージはが言うには、

「あなたは音楽を演奏しているんだ、ということ。」

うむ、またしても抽象的。煙に巻かれたようなこの気分。

「家では何度でも上手に弾けるわけですよね。じゃあ、大丈夫。音楽を作っているということに集中するんです。そうすればおそらくその難しいパッセージはうまく弾けるでしょう。」

ふむ・・・ここに至って我々は気がつくわけです。アシュケナージは、ある特定の難しいパッセージが弾けるかどうか、という演奏中の特定の緊張について語っています。

そうだ、たしかに緊張といってもいろいろ種類があります。

・お客さんがたくさんいる、満足してくれるか?
・途中で暗譜を忘れないか?
・自分はミスタッチをしないか?
・練習でよく躓く難しいパッセージは弾き切れるのか?
・オーケストラとの共演、室内楽であれば、指揮者や奏者とうまく合わせられるだろうか?

ぱっと考えただけでこれだけある。そう、演奏は不安だらけだ。

しかし人はひとりひとり違うのです。アシュケナージにとって緊張とは、難しいパッセージに時に膨らむ緊張が最も大きな障害なのでしょう。いや、これももちろん、良く良くわかります。そうでしょう。だいたい、難しいところが近づいてくると、来るぞ来るぞ・・・と思って心拍数がみるみる増えるもの。ピアノを弾く皆さんご同意いただけるでしょう。

わからない、という方は、フィギアスケートの演技中、トリプルアクセルを飛ぶところが近づいて来た、と思えば分かりやすいでしょうか。余計わかりにくいでしょうか。

でも集中すれば乗り越えられる。そうか、アシュケナージ先生、ありがとう!・・しかし、集中しよう、という思いが却って雑念になったりして・・・。

なお私の場合、本番の緊張は「忘れないかと気を揉む」が一番大きかったように思います。