アシュケナージがインタビューを受けている動画を見ました。20分ぐらい。いろいろ言われるけれど、やっぱりアシュケナージの存在って偉大ですよね。今の世代にアシュケナージに比肩するキャリアを築く人はいますでしょうか。なかなかいないように思いますね。
VLADIMIR ASHKENAZY: DON’T GO FOR THE CAREER
https://slippedisc.com/2018/11/vladimir-ashkenazy-dont-go-for-the-career/
このインタビューを見ていて、自分自身は非常に才能があった、と言い切っているところが素晴らしいと思いました。しかもその言い方には嫌味がない。自分は才能があるということを自然に受け入れている感じがします。聞いていて暗い気持ちになるどころか、なんだか前向きな気持ちになれる。
長い人生だもの、アシュケナージにもいろいろあったでしょうけれど、なんかさすがっすね。説得力がありますよね。これはほんと、そのへんの人らには真似できない。
アシュケナージはこのインタビューの中で、若い音楽家は音楽のことを考えるべきで、キャリアやお金のことを考えてはいけない、と言っています。これは確かにそうだなと思わせられると同時に、それは全ての人に当てはまるのだろうかとふと疑問にも思いました。
というのも、アシュケナージの才能というのは、そのへんの才能ではなくて、世界レベルでみてもずば抜けている。そんな才能を持った人だからこそ、音楽のことをまず考えればいいのであって、これはそこまでの才能はないものの、努力で生き残ろうとしているピアニストたちは、キャリアを考えなければならないのでは、と思ったのです。うまく立ち回ること、人に気に入られること(おもねりになるとまずいですけれど)、また呼んでもらうためには、アシュケナージクラスのずば抜けた才能があればいいですが、そうでない人は大変だ(そして世の中にはこちらの人のほうが圧倒的に多い)。
しかし、裏を返せば、ずば抜けた才能を持っていれば、音楽のことを考えるだけでキャリアやお金は後からついてくるということでしょう。
ではどれほどアシュケナージは才能があったのでしょうか。答え:めちゃくちゃった。
具体的に本人のこのインタビューの端々から、自分自身の才能への自信が聞き取れます。具体的には・・・・
最初の先生からどんな影響を受けましたか、という質問に対して、実は全然影響を受けていない(なぜなら自分は先生から学ぶこところがなかった)、ということを一生懸命遠回しに、感じよく言おうとしている。普通のピアニストなら滅多にそんなこと(=先生から学ぶことがないなんてことは)ないですもんね。
その次の先生は非常に要求の高い人で、あまり上手に弾かないと、そんな風に弾いてはいけない、なぜなら君はもっと才能があるからだ。と言われた、と言っているところも、、、、うむ、という感じがします。これ、アシュケナージみたいに嫌味なく言えるのってなかなか難しいですよ。単なる自慢になりがちですもんね。
アシュケナージは指揮者としても活動していて、その力量はそこまで高くは評価されていませんが、アシュケナージ自身が指揮とピアノの違いについて語っているところが面白かったですよ。指揮の場合は演奏者が助けてくれるが、ピアノ場合は誰も助けてくれない、と語っていて、そこからもなるほどと思いました。ピアノ演奏に自信があるからこそ出てくるコメントかなと。
結論として、やっぱりアシュケナージは滅多やたらと才能があったということになります。すげえよ爺ちゃん。(言葉遣いが悪くてごめんあそばせ)