エマールがまたやらかす

ピエール=ローラン・エマールがまたやらかしました。こないだはメシアンの鳥のカタログを一日がかりで演奏するという離れ業を、しかも都会ではなく、田舎で敢行。興行的にどうだったのか、という意味合いでも気になりますが、それよりなにより、純粋に聞いてみたかった、と言えよう。

そして今回は、ロンドンで、なんとリゲティを弾くというではないですか。リゲティのエチュード全曲。そしてピアノ協奏曲、そして室内楽(メトロノームのやつもやるみたい)。室内楽公演では即興(あるいは即興と名の付いたエマール自身の作品)もやると書いてあるよ。ロンドンのサイスバンクセンターが主催しているリゲティ・イン・ワンダーランドというシリーズの一環で演奏されるものです。これは聴きたい。

リゲティという作曲家は、現代音楽と言われるジャンルで、聴いていて楽しい音楽を作った数少ない人です(異論は認めない)。リゲティ聴いたことない人いたら絶対聴いてください。格好良すぎて病みつきになるから。あとピアノを弾く人はエチュード、ぜひ楽譜を買ってチャレンジしてください。そして挫折してください。一曲目からすさまじく鬼ですから。数秒で死ぬるから。

一曲目は「無秩序」ってタイトルなんだが、右手と左手がばらばらなんすよ。両手とも同じスピードで8分音符を弾いてるんですが。聴いている分にはその難度が分からないかもしれないけど、いざ楽譜を置いてピアノの前に座れば、すぐに脱落。弾けるようになる気がしない。あれ、どうやって弾いているのか、弾ける人の脳の中を覗いてみたい。特に自筆譜の楽譜が、やばい。これな。

そうそう、このエチュードは各曲のタイトルもいいよね。「魔法使いの弟子」とか「悪魔の階段」とか「無限の円柱」とか、題名だけでぞくぞくしちゃう。

話をエマールに戻して、この一連のコンサートシリーズにはリゲティ・イン・ワンダーランドという名前がついています。これはちょっとださいと思うんですよね。そういえばワンダーランドというCDが最近ありましたよね。アリス・オットのやつ。こっちも狙っていると思うんですよ。両者ともに元ネタは多分「不思議の国のアリス」。本の原題はAlice’s Adventures in Wonderland。ティム・バートンの映画のタイトルはAlice in Wonderland。

リゲティに不思議の国のアリスのイメージをかぶせるのは無茶なような気もしたけど、でも、思いのほかフィットするかな?今もう一度考えたらそう思ってしまった。あの物語も相当いかれてますからね。

なおチケット代金はリサイタルが£10, £15, £20, £25だ。協奏曲公演の方は£15, £20, £25, £35だ。これは・・・安い!ヴァイオリン協奏曲にはコパンチンスカヤも出ているのに。高くすると売れないからか。(安くても売れないかも、とも言うけど)

というわけで気になるあなたは来年5月ロンドンのサウスバンクセンターに行っちゃってください。
https://www.southbankcentre.co.uk/whats-on/classical-season/classical-weekends