ユジャ・ワン、軽量級のハンマークラヴィーア

ユジャ・ワン公式サイト
http://yujawang.com/

ユジャ・ワンが今シーズン後半、5月から演奏するリサイタルプログラムには、ハンマークラヴィーアを含んでいるのはご存じですか。

Brahms Ballades op. 10-1,2
Schumann Kreisleriana
——
Beethoven Sonata No.29 Op.106 “Hammerklavier”

なに・・・なんだと?ハンマークラヴィーア?

脱線しますけれど、彼女クラスになると、1年間ぐらい同じプログラムでリサイタルをすることが多いです。その方が集中できるし、完成度も高められるし、いろいろいいことばかり。飽きてきた頃に新しいプログラムを用意し始めればいいんです。ツィメルマンやソコロフなども基本1シーズンに1プログラムで世界中を回っています。

話を戻します。ハンマークラヴィーアはベートーヴェンのピアノソナタの中でも圧倒的に重い内容をもつ、45分ぐらいの長さを持つソナタです。さすがにデイアベリ変奏曲ほどには長くないけれど、こってり度は遥かにこちらが高い。

ユジャ・ワンの指の敏捷性は世界最高クラスであることに異論のある人はいないと思いますけれど、果たして彼女のハンマークラヴィーアはどんなものだろう。

ユジャ・ワンの出す音はムチのようにしなりヒョウのように襲う。・・・が、後期ベートーヴェンに合うようなずっしりとした重みがあるわけではない。だからあまり向かないのではないかと一瞬思うんですけど、しかしちょっと聞いてみたいかも、と思わせてしまうところがユジャ・ワン。

最終楽章のフーガなど、異様にパキパキしていて面白いかもしれませんね。だいたいあのフーガはみんな弾きにくそうにしているんですけれど、ユジャ・ワンなら圧倒的敏捷性で弾き分けるにちがいない。

さよう、超軽量級の、小回りが利くまくったハンマークラヴィーアなのにちがいない。既成観念を取っ払ってくれる面白い演奏になる可能性大。

・・・マネージャーは最初反対したかもしれませんけどね。