ディアベリ変奏曲を分解する:予告編

ローラン・カバッソが得意とするディアベリ変奏曲とは

ディアベリ変奏曲。ローラン・カバッソが今月JTアートホールで弾く曲です。カバッソはディアベリ変奏曲がめっちゃうまいということでフランスの批評家たちが激褒めしているんですよ。そう、雑誌のブラインドテストでもズバリ、1位!そんな人の演奏、気にするなという方が無理ですよね!

そうはいっても、かなりのベートーヴェン好きでなければ、この曲は「敬して遠ざける」そんな存在かもしれません。長いもんな・・・。そうなんすよ。一時間近くかかるんですよ。人によっては70分とかかけちゃう人もいる。・・・って、やってらんねーよ!

いや、ちょい待ち。待ってください。そういうことを言うのなら「第九」の方が長いっすよ。75分ぐらいかかる。でもみんな超ありがたがって聞いてますよね。特に年末は世の中第九だらけだ。じゃあそれよりも短くてわかりやすいディアベリ変奏曲を聴いてみても、いいよね!

そう、第九よりも簡単で短い、それがディアベリ変奏曲。第九よりも簡単で短い、それがディアベリ変奏曲!!

・・・が、やはり忙しい現代人の私たちはあまり全曲を通して聴くことがないかもしれません。じゃあ一日にちょっとずつ、聴いてみたら?そう、そうすればずっともっとわかります!

やっぱり一時間近くかかるゴルトベルク変奏曲だって、みなさんありがたやありがたや~、と聴いてますよね。バッハに出来てベートーヴェンに出来ないことはありません。

もっと楽しもうではないですか。ディアベリ変奏曲を。なので解説しましょう。ねもねも舎が。

ディアベリ変奏曲ータイトルの由来

そんなわけでまず今日は、タイトルの由来をお知らせいたしましょう。楽譜屋さんの名前です。ディアベリさんのために書いたんです。終わり。なるほど。

・・・終わってしまいました。楽譜屋さんと言われてもなんだかぴんと来ませんかね。ビジネスマンなんですよこの人は。ベートーヴェンとかシューベルトとかの楽譜を販売して、作曲者の名前を世の中に知らしめ、作曲家に富をもたらし、自分も栄えた、そういう人です。

楽譜って買う人がいたの?と思うでしょう。いたんですよ。昔はspotifyもitunesもなかったから、音楽を楽しもうと思ったら、自分たちで演奏するのが手っ取り早いよね。楽しいし。という人たちがいたんですよね。主に貴族。そういう人たちに楽譜を売って売って売りまくる、それがディアベリだったわけです。

この当時(今から200年近く昔)からヨーロッパではビジネスとして芸術が扱われていたのです。いやあ、ためになるなあ。

それでもって、ディアベリは自分も作曲家でした。自分の作った曲をテーマに変奏曲を書いてくれよブラザー!というわけで当時のいろんな人達に変奏曲の作曲を依頼した。そのうちの一人がベートーヴェンでした。ほか、チェルニーとかリストとか当時活躍していた50人に頼んだ。

たぶんディアベリとしてはけっこう軽いノリだったと思うんですよね。ブラザーっていっているぐらいですから(ここはうそです。信じないで)。でもベートーヴェンは依頼をなかば無視して、おもいっきりいじくって自分一人で33曲も変奏曲を書いてしまった。それがこれ。

そういう感じで成立した曲なわけです。うーん、楽しい。

ちなみにその、最初もくろんだ変奏曲もちゃんと完成しています。聴きたいという酔狂な人は、現代ウィーンの巨匠ブッフビンダーが録音していますから、聞いてみてもいいでしょう。ナクソス・ミュージック・ライブラリーで聴けるから。

さあ、次回から各変奏をぶった斬っていきますよ!!