最近、老齢のアーティストについて触れる機会が増えて来ているようにも思いますが、今日も老大家の話。
ジョルジ・クルターグは今年92歳。二十世紀を生きた最後の大作曲家と言われます。同じハンガリー出身のリゲティ(2006年逝去)と並び広く称賛されてきた人です。
なんと、意外なことにこれまでオペラを書いたことがなかったが、ついに来週初演にこぎつけるというニュースがニューヨークタイムズに掲載されています。以下のリンク。クルターグの子どもの頃の写真もあって、あらかわゆい。
A 92-Year-Old Composer’s First Opera Is His ‘Endgame
https://www.nytimes.com/2018/11/07/arts/music/gyorgy-kurtag-opera.html
上演されるのはオペラの殿堂、ミラノ・スカラ座にて。これですね。
http://www.teatroallascala.org/en/season/2017-2018/opera/fin-de-partie.html
このオペラの構想はかなり前からあったようで、スカラ座を率いるペレイラは12年近くも前から毎年、自身がその時働いていた場所で、あるときはチューリヒ歌劇場、あるときはザルツブルク音楽祭で、クルターグにオペラを書いてと頼み続けていたそうです。
クルターグは契約には応じましたが、作曲料は不要だといったこともあるそうです。締め切りが発生することで自由が失われることを恐れたのだとか。その結果?10年年以上という長き年月が過ぎ去っていったのだとか。
なんということでしょう。
このオペラは、オペラというジャンルの最後の作品となるであろうとまで言ってる人もいるとかで、現代音楽に対して「いまさら何やるの」的な閉塞感もあるのですけれど、それだけこの作品の価値を重く見ていることの現れなのでしょう。
クルターグのこのオペラはベケットの戯曲「エンドゲーム」をもとにしているそうで、原語のフランス語テキストを用いて書かれている。ベケットといえば「ゴドーを待ちながら」しか知りませんですたのでググってみましたところゴドーよりもさらに閉塞的な作品のようですね。
エンドゲームというこの言葉はチェスの用語で、勝負の終局とかそのあたりを指すのだとか。登場人物とか、簡単なあらすじはウィキペディアにありますんで読んでもらったらいいと思うんですがむちゃくちゃ暗くて救いがなさそう。登場人物は四人で、そのうち二人はドラム缶に入っていて両足がないとか、それだけで強烈すぎてくらくらきますわ。
ニューヨーク・タイムズのインタビューの最後に、このオペラは私にとってのエンドゲームなのです。とクルターグか語っていて、なんとも言えない気分にさせられました。92歳にして初のオペラ。本人はどんな思いなのでしょう。
聴衆を失い、目新しさも失い、予算やスポンサーも失いつつあるオペラ、とりわけ新作のオペラは、いよいよこの作品を持って死ぬのか。・・・それともまだ活路はある、のか?