ギトリス96歳、テルアビブで舞台に立つ

パリとテルアビブは約4時間40分で時差は1時間。パリから日本までは約12時間で時差は8時間。

何でこんなことを書くかといいますと、先週末、ギトリスがテルアビブでコンサートに出演したそうだからです。

ギトリスは普段パリに住んでいるので、移動にどれだけかかるのか、どれだけの身体的負担があるのかがこれで比較できますでしょうか。

先日日本で予定されていたコンサートは、体調不良によりキャンセルせざるを得なかったそうですが、その後回復し、テルアビブまで行き、出演したようです。移動距離はそこそこあるものの、時差がほとんどないというのはだいぶ違いますでしょうかっていうか、96にもなって飛行機で移動しようというのがすごいですね。

私が数年前にギトリスのコンサートに行った時はまだ歩いて舞台に入ったり出たりしていましたが、先週のテルアビブでは車椅子だったとのこと。しかも車椅子を押していたのがズービン・メータというからすごいことではありませんか。なおピアノはアルゲリッチ。

↑演奏したのは約30分だったとのことですが、この短いビデオご覧いただければおわかりのとおり聴衆の興奮はすごい。

このコンサートにサプライズで?出演した模様:
https://www.ipo.co.il/en/events/martha-argerich-in-a-special-chamber-concert/

ネタ元はレブレヒトのブログ:
https://slippedisc.com/2018/10/believe-it-martha-argerich-and-ivry-gitlis-on-stage-in-tel-aviv-tonight/

メータも82歳、自分より年長の現役音楽家を探すのは困難。そういう年になると、どんな気持ちになるのでしょう。尊敬できる先輩がいることは素晴らしいことですよね。

ギトリスの演奏はと言うと、もちろん往年のような輝きはなく、それに対する怒りの声もあるようですが、ちょっと待って。ギトリスの場合は、軽妙なトークが聴衆の心を惹き付け、会場をリラックスさせるから全く別なんですよね。ただ単に年老いて演奏がめちゃめちゃですと絶望的に暗い気持ちになるのですが、ギトリスの場合はそういう気持ちにならないから不思議。

もともと破天荒な人生を歩んできた人だからこその、でしょうか。演奏はもちろん技術的にあれなんですけど、舞台上で自由すぎて、飄々とし過ぎていて、発するオヤジギャグがやば過ぎて、一周回って感動する。

いやはやしかしギトリスとしても、こうやって素晴らしい音楽家たちに囲まれて老いて行くというのは最高の栄誉ですよね。(ピアニストはどうしても一人で孤独に老いて行くケースが多いかもしれませんが)、人に囲まれ励まし励まされという図式は素晴らしすぎる。

日本は遠いので、今後の来日は簡単ではないでしょうけれど(もうないかもしれない)、ずっと音楽家であってほしいし、きっとそうするんだろうと思います。

想像するにアルゲリッチもやがてこうして囲まれて慈しまれながら老いて行くのではないかと思います。想像しただけで涙が出てきそうであります。ねもねも、、、、。いや、まだまだアルゲリッチは元気一杯ですがね!