クレメンス・ハーゲンの驚くべき決断

ハーゲン弦楽四重奏団の名前は、このブログをご覧の方であればほぼご存知かと思いますが、いま世界で最も重要な弦楽四重奏団の一つです。

ハーゲン家の兄弟四人で結成され、一人は別の人に入れ替わったものの、ハーゲン家三人+ひげもじゃのおっちゃんで40年近く活躍。世界中を飛び回っています。CDも長い間ドイツ・グラモフォンから出していた。

もちろん共演するピアニストの名前もそうそうたるもので、キーシン、ツィメルマン、アルゲリッチ、内田光子など数々の名人たちと舞台や録音を共にしてきました。

そのハーゲン家のチェロ奏者、クレメンス・ハーゲンは以前よりカルテットの演奏に加え自身のソロ活動にも熱心で、ソリストとして日本でもN響と共演したり、ピアニストとデュオリサイタルを開いたりしていて、忙しいのにすごいことだなと思っておりました。

ところが、それで飽きたらないのか、さらに活動の幅を広げるというから驚きではありませんか。この度ニュースとして発表されたのは、ウィーン・ピアノ・トリオにメンバーとして加わる、2019/20シーズンから、というものでした。 

https://www.thestrad.com/news/new-cellist-for-vienna-piano-trio/8233.article

うおうおうお。大丈夫か。いまでもめっちゃ忙しいだろうにまた仕事を増やしちゃって。

いや、でも考えてみてください。できる人というのはどの世界でも常に滅茶苦茶忙しい。そしてできる人は忙しいとは決して口にしない。忙しくても、行けると思ったら引き受ける。結果を出す。それがため、人々からさらに信頼され、次々と仕事が舞い込むのです。

それに、クレメンス・ハーゲンは同じことを繰り返すのが苦手なタイプなのかもしれません。長い間カルテットばっかりやってきて、いい加減飽きたのかもしれない。飽きてはいなくとも、新しい風、リフレッシュがほしいと思ったのかもしれない。

ウィーン・ピアノ・トリオ(公式サイト)って、ハーゲン弦楽四重奏団ほどには、誰もが知っている、という感じではないかもしれませんね。クレメンス・ハーゲンの加入によって、彼らとしても「うまくマッチするかどうか」という不安よりも、刺激が増え、注目もされ、メジャーな葉での公演が増え、と利点の方が大きいのかもしれません。

というわけで、秋深まる日本から、これからの彼らの活躍を見守りたい(このメンバーで今後日本に来るのかどうか、わかりませんけれど)。