アルゲリッチが転んで怪我してキャンセルしたため突如指揮者が協奏曲を弾く

リカルド・カストロというピアニストがいます。たぶんあまり日本では知られていないと思いますがリーズ国際で優勝している人です。名前がなによりも印象的なので覚えやすい。そう、カストロ。ただしブラジル人です。

公式ページ:
http://www.ricardocastro.com/

一度だけヨーロッパで演奏を聞いたことがありますが、わりと男性的な顔つきとは裏腹にたいへんリリカルな演奏だったことを覚えています。そのときはピリスとのデュオリサイタルでした。

二人がそれぞれソロを弾き、デュオを弾いた。カストロが弾いたのはショパンのソナタ第2番でした。葬送行進曲の中間部の左手、ピアニシモがとってもイーブンでなめらかでした。 

久しぶりにカストロの名前を見たのですが、今は指揮もやっているのですね。ピアニストが指揮者になるのはなかやか大変ですが、ぜひ頑張ってほしい。

・・・と言うのが今日の話なのではなくて、このカストロが、指揮者として演奏するはずが、公演直前にアルゲリッチが風呂場(もしくはトイレ。bathroomと書いてあったから)で転んで怪我したため(なお全治2日との情報なのでそれほどひどい怪我ではない模様)、シューマンのピアノ協奏曲を弾いた、弾き振りしたというとてつもなく緊張度の高いお話。

うおお。指揮者が弾きぶり、しかも急遽、ってのはたまらんですね。そりゃあシューマンですから彼クラスのピアニストならレパートリーだったのでしょうが、自分が最近勉強しまくったのはオーケストラパートであって、ピアノパートではない。

ほら、おまえピアノ弾けよ、レパートリーだろ?といきなり言われて弾けますか普通。しかもシューマンのピアノ協奏曲は暗譜が危険なので有名な曲だぜ?(さすがに楽譜見て弾いたのかも)

いやあ、よく引き受けましたなあ。他のソリストも探したんでしょうか、尋ねられて二つ返事で俺やるわと言ったのか。いや、そもそもアルゲリッチが転んで怪我したのは公演の直前だったらしく、聴衆にも事前に発表できなかったという事がこの公演の公式ページにニュースとして出ていますから、けっこう差し迫ってやるのやらないの的な感じで選択を迫られたのかも。

公演の公式ページ:
http://www.mitosettembremusica.it/en/news/comunicato-il-pubblico-del-concerto-del-6-settembre-2018-al-conservatorio-di-milano.html

相当図太い神経の持ち主でないと出来ない芸当ですよ。音楽はリリカル、でも神経は図太い。相反するようで共存するんですな。

すごすぎ。自分もこうありたい。見習いたいわ。(無理)