ラフマニノフの練習法

Rachmaninov was a dedicated and driven perfectionist. He worked incessantly, with infinite patience. Once I had an appointment to spend an afternoon with him in Hollywood. Arriving at the designated hour of twelve, I heard an occasional piano sound as I approached the cottage. I stood outside the door, unable to believe my ears. Rachmaninov was practising Chopin’s etude in thirds, but at such a snail’s pace that it took me a while to recognise it be- cause so much time elapsed between one finger stroke and the next. Fascinated, I clocked this re- markable exhibition: twenty seconds per bar was his pace for almost an hour while I waited riveted to the spot, quite unable to ring the bell. Perhaps this way of developing and maintaining an unerring mechanism accounted for his bitter sarcasm toward colleagues who practised their programmes ‘once over lightly’ between concerts. (Chasins, Abram. 1967. Speaking of Pianists. New York: Knopf, 44.)

ラフマニノフはすさまじい完璧主義者だった。無限の忍耐力で長時間練習していた。ある日の午後、私はハリウッドのラフマニノフの自宅に呼ばれていた。言われたとおり12時に到着した。建物に近づくにつれ、ピアノの音がぽつりぽつりと聞こえてきた。扉のそばに立った私は自分の耳が信じられなかった。ラフマニノフはショパンの3度の練習曲を練習していたのだが、そのテンポのあまりの遅さに、気がつくのにけっこうな時間がかかったのだ。私はとても興奮した。一小節につき20秒はかかっており、私の足はすっかりその場に固定されてしまい、1時間はその場に釘付けにされていた。ドアベルを押すことが出来なかったのである。このような方法で彼のテクニックは維持されてきたため、他のピアニスト達がコンサートとコンサートの間に「一回だけ、軽く」曲を練習することに対する厳しい批判をするのだろう。(エイブラム・チェイシンズ)

いやーこれはおもしろい逸話ですね。ラフマニノフは素晴らしいピアニストだと私は確信しております。

ショパンの3度の練習曲は限りなく難しい。わずか2分の作品ですがこの曲に泣かされてきた人は数知れず。しかしウルトラ・スローモーションで練習したと言っても1小節に20秒とか、もうわけがわからない。凄すぎ。左手とか死ぬほど簡単だから左手ちゃんは超退屈ですよね。というか自分がやっても集中力がすぐ切れる気がする。

むかし「ゆっくり練習しろ!」って先生によく言われたけど、その意味を考えずにひたすらゆっくり練習をしていた記憶があります。それではうまくならないよね。形から入った日本人のダメなパターン、ドストライク。

でも、ゆっくり練習することで素早く上達ってことの意味、今はわかる、気がする。スローモーション練習について詳しいことはこのページをご覧下さい。

Enjoying Ultra-Slow Practice
https://practisingthepiano.com/enjoying-ultra-slow-practice/

このページの著者はピアニストで教育者のグレアム・フィッチです。

全部訳すのはめんどっちいので訳しませんが、大切そうな所だけをちょろちょろっと訳しますと、機械的になってはいけない、音楽的に。可能な限り集中して。と書いてあります。

テンポはゆっくりでも、何の感情もない機械のようになっていてはだめです。フォントサイズが12から48になって細かいところが見える分、ガタガタになってしまってはだめなんですよ。きわめてなめらかにスローモーションで。太極拳みたいな感じっすか。

あと、繰り返して練習することの大切さも書いてあります。「誰も、たった一回やっただけで出来るようになる人はいない。」

何をするのか指と身体に命令すること。ミスったらかならずやり直すこと。

なかなかためになりそうな素晴らしい事がかいてあります。英語が出来ない人も、英語の勉強を兼ねて全部読んで日々の糧にすることをお勧めしたい。

ただし、練習時間がいたずらに伸びるのだけは気をつけた方がいいとは思いますよ。下手にゆっくりと長々とやるのはどうかなと思います。一番だめなのは、ゆっくりやったからうまくなるだろう的な自己満足に陥ることですよね。自己満足ほどこわいものはない。結果が伴わなければ意味はないのです。