音楽家は体力が命。移動と演奏の繰り返しですから、身体が強くないとだめ。なので、一流と呼ばれる人たちは不健康そうに見える人でもだいたい相当な体力があります。
恐らくその例外的存在なのがブレハッチ。ブレハッチは、いつ見ても身体が弱そうな人だな、という印象を受けます。ほっそりしているし、顔色もよろしくない。ショパンという人が生まれ変わったとしたらこういう感じの人なんだろうか?という不思議な印象を持つ人です。そして実際にこないだ東京公演がキャンセルになりました。(前回の来日?か何かも中止になっていたような。)
中止になった、と聴いても、ああ、お大事に・・・とまず思いました。これがミケランジェリやアルゲリッチ、あるいはクライバーとかならまた別の思いが頭に浮かぶのですが、ブレハッチについて言えば、優しい気分というか、慈しみの気分になる。そんな不思議の人。それがブレハッチ。
そのブレハッチのインタビューがアエラに掲載されヤフーニュースにも掲載されている(内容は同じ)。
アエラ:
https://dot.asahi.com/aera/2017110900042.htm
ヤフーニュース:
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171109-00000042-sasahi-ent
多分、先日の東京公演をキャンセルする前、来日中で調子がよかった日に行われたのでしょう。これを読んでいて面白かったのは、浜松コンクールのプレオーディションで、中村紘子が、審査結果発表前に「浜松でお会いしましょう」と言った、という点。
これってまあ普通に考えたら、そんなこと発表前に言っちゃって紘子選手アウトッ!なんじゃないのかなとも思うんですが。中村さんもお亡くなりになっておりますし、結果としてブレハッチという人が世に出る一つのきっかけにもなったわけですし(ブレハッチは浜松第2位入賞の賞金でグランドピアノを買ったのだ)、つまり結果オーライ、というわけになりますでしょうか。
もやもやが残る?いや、コンクールというのはそうそう簡単なものではありません。上の中村紘子さんの例はぽろりと機密事項?を口に出した例ですが、それよりももっと大変な・・・政治的なバトルもありますよね。
コンクールは出来るだけ公平にやる、という人がいる一方で、この人を一位にしましょう、みたいな力が働いたりします。現在は出来るだけクリーンにやるというのがトレンドになっているとは思いますが、コンクール内の政治については、語りはじめればそれはそれはもう、きりがなくて、本が10冊ぐらいは書けると思います。そして、政治の結果がよい方向に動いたりもするので、もうなんというか、はい、大人な世界。
何度言っても言いすぎではないと思うのですが、コンクールはあくまでもきっかけなんですよ。才能があって、努力を惜しまない人間は、コンクールの結果如何に関わらず出てくるし、そうでなければ消えて行く。だが才能もすり減っていくので、努力を続けても駄目になることもある。音楽家とはつらい職業なのです。
「コンクールの不公平の結果、きっかけすらもらえない才能あるピアニストはどうなのか」と言う人もいますが、本当にすごい人はコンクールとは関係なく有名になります。
ブレハッチについて言いますと、才能もあって努力も惜しまぬ素晴らしいピアニストだと理解しているので、これからもゆるい気持ちで(本人の負担にならぬよう)応援して行きたいと思っています。