ロシア人ピアニスト、イゴール・レヴィットが、ただいまロンドンで開催中のBBCプロムスの初日に出演し、ベートーヴェンの協奏曲を弾いた後、アンコールにリスト編曲の「歓喜の歌」を弾いたことが物議を醸しております。
映像はこれ。プロムスを主催しているBBCのサイトにある:
https://www.bbc.co.uk/events/e556q9/play/agpp8g/p058rp3j
歓喜の歌というのはもちろん、ベートーヴェン「第九」の、皆さんご存じのあのメロディー。これを弾いてどうして物議を醸すのか。日本に住んでいる我々にはわかりづらいですね。
ねもねも舎もよくわかりませんでした。なので調べてみました。
「歓喜の歌」は『欧州の歌』なんです。それでもよくわかりませんか。欧州連合の歌なんです。EUの歌です。このメロディーが、ヨーロッパ連合の歌として、国歌のような位置づけにされているのだそうです。Wikipediaにも書かれています。
これをアンコールの場で弾くというのは、ブレグジット(イギリスの英国離脱)に対する明確な反対表明である、とみなされるわけです。もちろんレヴィットという人は頭のいい人でしょうから、そのあたりはお見通しで、あえて弾いたんだろうと想像できるわけです。
というわけでイギリスでも、ヨーロッパでも話題が沸騰しているとか。バレンボイムもなんだか政治的な発言をしたようですがそちらはあまり適切ではなかったようで総スカンを食らっていますが、このレヴィットのケースは賞賛の声が集まっている模様。
結局イギリスは、欧州から出て行くことが決まっているのですから、抗議をしたからといってどうなる、というわけではないと思うのですが、多くの人の心に、この演奏を通じ何かが届いたのでしょう。
日本に住んでいると、対岸の火事、ではないですが、こういうのは肌感覚ではどうしても理解しづらいですが、こうやって物議を醸しているのを知れば、そういうものなのか、と少し頭の中では理解が進んだように思います。
なお、BBCの、ウェブサイトで公開されている映像は日本では見られないケースがほとんどなのですが、このアンコールは見られるようになっている。もしわざと見られるようにしているのだとしたら・・・BBCも粋な計らいをしてますな(わざとじゃない可能性もあり)。