メナヘム・プレスラーは、今を生きる名匠ですね。90歳を過ぎてなお、精力的に世界中を巡っていたその姿は驚きでした。さすがにレパートリーはモーツァルトなどだいぶ限られてきていますが、普通にYouTubeなどで聴いて、うまいなと思っていました。
老ピアニストというと名ばかりで全く弾けていない、という人もけっこういたりするんですが、プレスラーは違った。別格でした。私が実演を最後に聴いたのはもう4年ぐらい前で、すでにほころびがあってもおかしくないお年でしたが、ほとんどなかったというところが驚異的でした。
プレスラーにはオフィシャルサイトがあります。ご覧になったことがありますか?今久しぶりに見てみたら消えていたんですが(涙)、そこにスケジュールが載っていたんですよ。そしてそれはもう、とんでもない過密スケジュールだったんですよね。文字通りアメリカ、アジア、ヨーロッパを飛び回っている、みたいな。
去年、ユダヤ人のピアニストと「プレスラーのスケジュールはとんでもない、すごい」という会話をしました。「本当だよ、でもプレスラーの場合はマネージャーがガンガン入れているんだよ」という回答でした。「プレスラーの場合は演奏が生命力の糧だ。演奏をしているからあんなに健康でいられるんであって、演奏を止めたらすぐに駄目になってしまうのかもしれないよね」
というような会話をしてうーむ、やっぱりプレスラーすごいよな、という結論にみんなで落ち着いたのです。今回の入院の報は大変残念ですが、上の会話のような事にならないことを願っています。
つい先日もティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデンのベルリン・フィルハーモニーでの演奏時に撮影された素晴らしい写真がありました。
それがこれです:
https://www.facebook.com/staatskapelle.dresden/posts/917956218253847
爆発的に難しい人として知られるティーレマンが笑顔でプレスラーに寄り添う、素晴らしい絵でした(ティーレマンのあざとさもちょっとだけ感じますが、それでも美しい写真です)。