エマールは話題を作るのもうまい。今度はオールド・ベヒシュタインだ!

ピエール=ローラン・エマールはピアノももちろんバカな!というぐらい上手いですが、話題を作るのもうまい。

たとえばこのねもねも舎におきましても、朝から晩までかけてメシアン「鳥のカタログ」を自然の中で演奏してみたり、巨額の賞金をゲットしたり、といったお話を以前採りあげました。この人の場合、受けを狙って話題を作っているというよりも、多分自分の好奇心とか直感とかに忠実な結果として話題になっている、のではないかな、と思います。自信ないけど。

いずれにしましても、こうやってアジアの場末のブログでも折に触れて採りあげさせて頂いております。今回もありがたく話題を頂戴致します。

このたびの話題は、ロンドンのウィグモア・ホール。エマールのリサイタルが今週の土曜日にあるそうです。それだけならそこまで話題にはならないかもしれません。公演前に調律師とのプレトークがある、ともありますが、プレトークも最近ではしばしばやりますから、それほど話題性があるわけではない。そして演奏する作品の中にオブーホフという人の一部マニアがよだれをたらしそうな曲が含まれている、ということも確かに面白いですが、まだまだ。

話題の種は・・・使用する楽器です!今回は、1901年にウィグモアホールが出来た時以来、ホールが所蔵している古いベヒシュタインを使用するそうです。おお。オールド・ベヒシュタイン!

スタインウェイ&サンズ、ベーゼンドルファーと並び世界三大ピアノメーカーの一つと言われながらも、ベーゼンドルファーの存在感はお世辞にも「すごくある」とは言えません(すいません)。流通している数からも、実際の評価からも(すいません)。

しかし、「ベヒシュタインの古いのいい」とは多くの人が口にすることです。近年のものとは比較にならないほど「味わい深い音がする」と言われるオールド・ベヒシュタイン。たとえて言えばオールド・ノリタケみたいなものか(オールド+ブランド名というだけで適当に思い浮かべただけ)。私も一度だけ1900年ぐらいのベヒシュタインを弾いたことがありますが、それはもう・・・・・どんな感じだったか忘れちゃいましたね。でもね、多分いい楽器なんですよ。ウィグモアの楽器も。ええ。

しかも近年、このウィグモアホールのベヒシュタインは、辣腕調律師によってリビルドされたと書かれているではないですか。うむむ、この公演は聞いてみたいぞ。そう思ってもう一度公演のプログラムを眺めてみると、オブーホフに加え、スクリャービン後期の小品とか、リストの詩的で宗教的な調べS154とか、何と言うか、世紀末的な、無調的な雰囲気を湛えた作品を多く含んでいる。オブーホフだって、シェーンベルクより先に12音を考えた人だからね。

エマール選手のこういうセンス、大好きですね。相当上から目線で本当に申し訳ありません。