譜めくりをしていて安心できる演奏家とは。

昔譜めくりをさせていただいたことのあるチェコ人のピアニストが、あるヨーロッパの音楽雑誌から月間最優秀レコーディング賞をもらっていました。この人は力が抜けた演奏をする人で、譜めくりがものすごくしやすかった思い出があります。

力の抜けたピアニストの譜めくりは本当にこちらもやりやすい。そしてついでに言えば、呼吸が自然な人の譜めくりもやりやすい。

力の抜けた、というのは、身体が脱力している、リラックスできている状態です。

バットを持つプロ野球選手の筋肉はリラックスしていると聞きますが、それと同様、ピアノを弾く身体もリラックスしていないとだめなんです。「腕で弾く」というのではだめで、腰をしっかり定めて、背中から演奏するのです。

残念ながらプロでも多くの人は力を入れようとするとガチッと身体を固くしがちで、徹底的な脱力が最初から最後までできる人はめったにいません。身体の固さは「あがっている」という精神的によろしくjない状態に直結しやすく、ピアニストのその緊張感は譜めくり人にも伝播しまして、譜めくり人の心拍数も上がります。

脱力の神様みたいなのはチッコリーニとかですね。見た目にもあそこまでリラックス出来ていたからこそ、高齢でも素晴らしい演奏が出来たのだろうということは想像に難くないです。

そういう人は呼吸も自然で、ここで息を吸うのだな、とはっきりわかる呼吸をしているのでめくる方も落ち着いていられるのです

蛇足ですが、ステージ上でピアニストは普段とは全然違う呼吸をしています。今度注意して聞いてみてください。うまい人はフレーズに合わせて歌うように呼吸をしています。

だからといって気を抜くと落っこちる(めくり忘れる)危険は常にあるわけですがね。

譜めくり道は常にトラップがいっぱい。